読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

To_AsteroidB216

140文字から溢れるTwitterをやる資格のないひと

創作における“盛り上がりのための死”はチートっぽいねって話

「物語中に“死”というイベントを入れるのはなぜ?」と聞かれれば、やはり話に盛り上がりをつけたいからというのが主な理由だと思います。

 

書き手からすれば死は便利ですが、便利ゆえチートのようになる場合があります。

さらにチートは、いわゆるバグを生み出します。

 

(※チートという言葉自体が定義の曖昧なインターネットスラングであるため、この記事では「便利だが世界観を崩壊させてしまう違和感・不具合を伴った存在」としてチートという言葉を使用します。)

 

最初に言っておきますが、

・死を題材にした作品

・死が物語全体に大きく関わる作品

・その死が無ければ物語が確実に破綻してしまう作品

私はそのようなものに関して口が裂けても文句は言えません。言いません。

あとギャグとして人がバタバタ死ぬ作品も含んでいません。

「笑いとはいえ人を簡単に殺していいのか!」みたいな話をする気はないので他でやってください。

 

まず、チート行為は軽々とゲームクリアにこぎつけることができます。なぜなら超強くできるから。

ポケモンなら御三家が初っ端Lv100、どうぶつの森なら開始時の貯金額が999999999ベルみたいなものです。

ポケモンどうぶつの森も知らないけどロマサガなら知ってるからそれで例えて」みたいな大人は今時の若者とのジェネレーションギャップに悶え苦しんでください。

 

話を戻します。

でもチートってめっちゃ違和感があるんです。そこにあるはずの過程すっ飛ばしちゃうから。他と比べてバランスがおかしい。チート部分だけ強すぎる。

周りも「あ、こいつチート使ったな」って分かります。

チートは通常プレイで味わうことのない安っぽさ、データがすぐに壊れてしまいそうな脆さを伴います。バグも発生します。

ゲームクリアの達成感も通常プレイより少ないです。

 

さて、それらのワードを創作に当てはめてみますと

チート=盛り上がりのために無理やり入れられた「死」

ゲームクリア=作品を書き上げること。また、それを誰かが見ること

バグ=作品の世界観を損なう存在・受け手にとって心地の悪い感情(違和感・困惑など)

という風になります。

 

ここでやんわりとした例を少し。

 

【①作中の盛り上がりのためパターン】

夢に向かって努力している主人公

→困難を乗り越えつつ夢へのキッカケを掴む

→主人公を応援してくれていた親友が突然死ぬ

→絶望し夢の舞台からも逃げる

→何らかの形で主人公の元へ現れる親友の霊

→「大丈夫だよ!ずっと見守ってるよ!」みたいなことを言って消える

→元気づけられた主人公、夢から逃げない心を手に入れる

 

文としてまとめてみるとあまり違和感がないように思えますが、実際に作品を見ると少し引っかかる場合があります。

①の場合、本当に突然死にます。

主人公が幸せの真っただ中にいる時、いきなり友人から電話がかかってきて「落ち着いて聞いてね……○○が殺されたの……」とか言われます。主人公超ビックリ。こっちも超ビックリ。

伏線を張っていればいいというわけでもありません。

「そういえばさ、この近所で放火魔が出たんだって!」

「死んだ人もいるんだってさ」

「あんたも夢追っかけるんでしょ? 気を付けて帰りなよ」

「大丈夫だって、そっちこそ気をつけてよ」

みたいな会話が不自然に出てくると(あ、これ放火されて死ぬな)って私は思います。俗にいう死亡フラグってやつですかね。伏線の雑さはまた別の話かもしれませんが。

 

しかしながら、チートな死だけが安っぽさの原因ではないのです。

確かに不自然な死の入れ方も一つなのですが、更に安っぽさを倍増させてしまうのが

「チートな死 + それによって巻き起こる感情変化」のコンボ。

 

なんで死のイベントを入れるのか、それは挫折→躍進の流れを作りたいのがおおよそだと思います。

不自然で違和感で安っぽくなる場合、作者のそういう都合が透けて見えてるんです。

ああ、この盛り上がりのためにこの人物を殺したんだなあって。

死ぬから盛り上がるのであって、盛り上がりのために死んじゃだめなんですよ。

 

【②性格の裏付けのためパターン】

暗い主人公

→周りが元気づけようとするが効果なし

→実は過去に大切な人が死んでいたと判明

→今の主人公にとって一番大切っぽい人が色々言う

元気づけられた主人公、トラウマから逃げない心を手に入れる

 

よくある話です、物語に描かれない背景にある壮絶な過去。

こちらは①より『それによって巻き起こる感情変化』部分が分かりやすいので挙げさせていただきました。

最初はいかにも近づきにくい陰気くさい雰囲気を醸し出しているのにも関わらず、過去にあった悲しい死について打ち明け、周りから優しくされたら元気になる。超チープ。

何年もかけて主人公との信頼関係を築き上げるか、主人公にかけた言葉が主人公にとっても受け手にとっても説得力のあるものか。どちらにせよ、受け手も納得するほどの描写がなければいけません。

だって、そうしないと過去の死はたった軽い一言で元気になる程度のものだったということでしょう?

性格を歪めてしまうほどの壮絶なトラウマとの釣り合いが取れていない。矛盾。不具合。バグ。

 

捨て駒じゃないんです、人物たちは。

作品上ならその人物は様々な死に方をするでしょう。でも殺しているのは作者自身です。

周りを泣かせるために、友情や愛情を芽生えさせるために殺すのは止めてほしい。殺すならもっと愛を持って殺してください。

創作上とはいえ作り上げた一つの命です。作者が軽く殺せるほどのモノに受け手が感情移入できるわけがありません。

「自分で頭痛めて生んだ子なんだから最期の瞬間まで立派でいてほしい」くらいの気持ちで心を痛めながら殺してほしいです。

 

もちろん作者だけでなく、人物に対する愛情深さは受け手にも持っていただくことが重要ではないでしょうか。

「突然の死」というのが分かりやすい表現かなと思います。

①の時に親友が突然死ぬという例を出しましたが、そういう突然ではありません。 受け手にとって突然という意味です。

特に思い入れのない人物がいきなり死んだと言われても「エッ誰だそれ!?あ、あいつか!あいつ死んだんだ!……へ、へえ!まじか!突然だな!」となります。

存在が不可欠なほどに描写されている人物であれば、受け手もその死の重さを実感するのではないでしょうか。

 

長くなってしまいました。

死って便利なんです。

そもそも“死”自体が事件です。今まで見ていた人物の命が尽きる。それだけで受け手はハラハラしちゃうものです。

そして、その死に携わるひとりひとりにドラマがうまれます。

悲しむ人、喜ぶ人。泣き叫ぶ人、何とも思わない人、後追い自殺する人…… それだけで一つ作品が書けてしまいそうなくらいなのですから、作品のエッセンスとして“死”を投入するのは少なからず効果があるものです。

しかし死はチートのようになりうる。

チートによりゲームはクリアしやすくなるけども、それで本当にいいのか。バグを背負ってまでチートを使う意味はあるのか。

気が急くのも分かりますが、今一度冷静になり「その死の必要性」を考えていただきたいです。 せっかく作った世界観を壊さないためにもね。

 

以上、「創作における“盛り上がりのための死”はチートっぽいねって話」でした。ありがとうございました。